名東区の歯医者、西山歯科・院長、岩瀬です。
日常生活でもよく起こりうる「しみる症状」は少なからずみなさん体験があるのではないでしょうか。一時的ならまだいいですが、継続的にしみが続くと色々と生活に支障が出る事もあるかと思います。
CMでもよく目にしたり、耳にすることもあるかと思います。冷たいもので歯がしみる、そんな症状で悩んでいる人は少なくありません。虫歯じゃないのに歯がしみるものを「知覚過敏症」といいますが、日本人の4人に1人がこの辛い症状に悩まされていると言われています。
今回は「知覚過敏症」に関してのお話をしていきます。
目次
1.知覚過敏の症状
知覚過敏のよく起こる症状としては
・冷たい食べ物、飲み物でしみる
・うがいの水がしみる
・冷たい風がしみる
・温かいものがしみる
・味の濃いものがしみる
・歯磨きの時にしみる
など
大体がこのようなものです。ほとんどの場合は「冷たいものでしみる」という症状です。
2.知覚過敏の原因
知覚過敏は、歯周病や加齢などにより、歯の根元の部分の象牙質が露出しておこります。
歯は、健常な状態であれば象牙質はエナメル質と歯肉におおわれていて、冷たさなどの刺激から守られています。しかし、歯周病が進行したり、加齢や不適切なブラッシング、不正なかみ合わせなどで歯茎が下がってしまうと、歯の根元の部分の象牙質が露出していまいます。象牙質には歯髄(神経)につながる無数の穴(象牙細管:ぞうげさいかん)があいているため、象牙質の穴を通して、受けた刺激が神経に伝わり痛みを感じてしまいます。この痛みは一過性なので、刺激がなくなると痛みもなくなります。
<知覚過敏を起こす主な原因>
①歯周病
歯周病は知覚過敏を引き起こす大きな原因となっています。歯周病が進行するにつれ、歯茎が下がり、もともと歯茎の下に隠れていた歯根が露出してきます。歯根には歯冠(歯の頭の部分)とは違って表にエナメル質がありませんので、刺激を過敏に感じ取ってしまうのです。
歯周病などの歯周疾患が原因で知覚過敏が起こっている場合は当然、その歯周疾患を治さなければ知覚過敏も治りませんので、知覚過敏の治療と併せて歯周疾患の治療が行われます。
特に歯周病になると歯茎が下がり、象牙質が露出しやすくなるため「歯がしみる」知覚過敏の症状が出やすくなりますので、「歯垢(プラーク)・歯石」を徹底的に除去し、歯周病を根気強く治療するだけでなく、知覚過敏も根気強く治療していかなければなりません。
ただ歯石を除去する事によって、いままで歯石に覆われていた象牙質が露出し、知覚過敏の症状が一時的にひどくなる可能性も十分ありますが、歯石が付着したままでは歯周病を治す事は不可能なので、歯周病治療と併せて「薬の塗布・コーティング材・ナイトガード(マウスピース)」など、知覚過敏の治療を併せて行うようになります。
②加齢
歯茎は歯周病にかかっていなくても、だんだんと加齢によって下がる傾向があります。そこで歯根が露出してしまうと、知覚過敏を起こすことがあります。
③乱暴な歯磨き(圧が強い歯磨き)
日常的にゴシゴシ力を入れて磨いたり、硬い歯ブラシを使って磨いていたりしていると、歯茎がダメージを受けて、下がってしまいます。また、歯をゴシゴシ磨いていると、歯に傷がつき、それが蓄積することで歯がすり減り、余計にしみるようになります。
*歯をみがく時の注意
毛先を歯にきちんと当ててみがきましょう。
軽い力でみがきましょう。
歯をみがく力が強すぎると歯ブラシの毛先が開き、動きが止まってしまうため、プラーク(歯垢)が落ちにくくなります。
歯ブラシは小刻みに動かして使うなど、力の入れ方や動かし方に注意しましょう。
やわらかめの毛の歯ブラシを使うのもよいでしょう。
歯がしみる時には、冷たい水ですすがず、ぬるま湯などを使いましょう。
知覚過敏ケアハミガキ(歯磨き粉)は、刺激の伝達を防ぐ薬用成分である硝酸カリウム(イオン)や刺激の伝わる象牙細管の入り口をふさぐ薬用成分、乳酸アルミニウムの配合で、歯が「しみる」のを防ぎます。継続的に使うことをお勧めします。知覚過敏ケアハミガキを使っても症状が続く場合は、歯科医院にいきましょう。
④歯ぎしりや食いしばり
歯ぎしりや食いしばりをしていると、強い力で上下の歯の擦り合わせ続けることにより、歯の噛む面がかなりすり減り、象牙質が露出してくることがあります。また、歯に強い力がかかり続けると、歯の根元に力が集中し、その部分がくさび状に欠ける状態である「くさび状欠損」を起こし、そこからしみるようになることもあります。
⑤歯牙酸蝕症
酸っぱいものには酸が多く含まれています。酸は歯を溶かしますので、摂り過ぎてしまうと、強い酸によって歯が溶け、象牙質が露出します。これを歯牙酸蝕症と言います。虫歯は虫歯菌が出す酸によって歯が溶かされる病気ですが、虫歯の場合は局所に限られるのに対し、歯牙酸蝕症の場合は、歯が全体的に溶かされてしまいます。
⑥虫歯の治療後
虫歯を機械で象牙質まで削った後は、歯の神経が過敏になります。その後その部分を金属などで覆ったとしても、神経の状態が元に戻るまではしばらくしみる症状が続きます。
⑦ホワイトニングによる知覚過敏
歯を白くするホワイトニングの薬剤による刺激で、ホワイトニング中、もしくはホワイトニング後に知覚過敏を起こすことがあります。
⑧歯の外傷
歯を強くぶつけたりなど、強い刺激が加わると、一時的に神経が過敏になり、知覚過敏症状を起こすことがあります。
3.知覚過敏の治療法
①知覚過敏症状を抑える薬の塗布
歯茎が下がり、歯根が露出してしみている場合には、歯科で知覚過敏症状を抑える薬を塗布し続けることで症状が改善する場合があります。
ちなみに薬の塗布の場合、1回だけでなく数回、塗布しなければ効果を得られない事もあり、「レジン(樹脂)・歯科用セメント」などのコーティング材を使用する場合は日常の歯磨き(ブラッシング)によって必ずコーティング材が擦り減っていってしまうので、数ヶ月ほどで効果がなくなってしまうことが普通です。
ただその間に「歯の再石灰化(唾液に含まれるカルシウムやリンが傷ついた歯(エナメル質)の表面にくっつき歯(エナメル質)を修復する)」がうまく進めば、薬の効果がなくなったり、コーティング材が擦り減ってなくなってしまっても「歯がしみる」症状は出なくなり、結果、知覚過敏が治ることも十分期待できるのです。
②コンポジットレジン(樹脂)を詰める
歯の根元がくさび状にかけてしまっている場合には、歯科用プラスチックであるコンポジットレジンを詰めることで速やかに知覚過敏症状が改善することが多いです。
この場合に使用される薬の代表的なものが、「フッ化物が配合された薬」ですが、「レジン(樹脂)・歯科用セメント」など、薬ではなく物理的に象牙質をカバーするコーティング材を使用することもあります。
③レーザー治療
知覚過敏を起こしている歯にレーザーを照射することで症状が改善することがあります。
④知覚過敏用の歯磨き粉の使用
知覚過敏用の歯磨き粉には、刺激を伝わりにくくする成分が含まれているため、継続使用することで効果が見られる場合が多くあります。
⑤歯ぎしり用のマウスピースの装着
歯ぎしりが酷い人の場合は、就寝中に歯にダメージを与えないよう、歯ぎしり用のマウスピースを装着することをおすすめします。マウスピースは歯科で保険が適用されます。
知覚過敏の最も大きな原因の1つが「歯ぎしり」ですので、歯ぎしりが原因で知覚過敏になっていると思われる場合は当然、歯ぎしりを治さない限り知覚過敏も治りません。
しかし、歯ぎしりの原因は「不安・疲れ・ストレス」などさまざまなことが考えられ、それらを解消すること自体、現代社会で生きる人たちにとっては容易ではありません。
そこで歯ぎしりを直接、治す事はできなくても、『ナイトガード(マウスピース)』という歯をカバーする器具を使用し、歯ぎしりによるエナメル質、歯周組織の破壊を防ぐ治療が行われます(長期間ナイトガード(マウスピース)をすることによって、歯ぎしり自体を治す効果も期待できるとされています)。
また歯ぎしり同様、知覚過敏の原因となる「咬み合わせ」が悪い場合は、歯を削って咬み合わせをよくする『咬合調整』が行われます。
歯ぎしりは知覚過敏だけでなく歯周病などの歯周疾患に非常に大きく関わっている症状ですので、場合によってはナイトガード(マウスピース)などの物理的な方法で治療していくだけでなく、「不安・疲れ・ストレス」などを取り除く精神療法による治療も必要かもしれませんので、かなり長期間の治療を覚悟しなくてはならないかもしれません。
⑥神経を抜く
知覚過敏の場合、上記のような治療が行われますが、それでも知覚過敏が治らなければ最悪、「神経を抜く」ことを選択するしかない場合もあります。
さまざまな治療を行っても改善の見込みがない場合など、歯の神経を抜くことによって、歯のしみ、痛みを感じないようにするのです。
ただ歯の神経を抜くと当然、歯のしみ、痛みは感じないようになりますが、神経がなくなると、
・歯の変色(黒ずむ)
・歯がもろくなる(歯に栄養分が行かなくなるため)
・歯周疾患(虫歯など)の進行が早くなる
など、さまざまなマイナス面がありますので、歯の神経を抜くのは本当に治療の施しようがない状態と判断された場合のみで、歯科医でも神経を抜くのは最終手段の治療として行われるのです。
歯がしみる場合、知覚過敏ではなく歯周病、虫歯や咬合、歯ぎしりが原因のこともあります。 もし歯がしみる場合には自己判断せず、まずは歯科で確認してもらいましょう。