名東区の歯医者、西山歯科・院長、岩瀬です。
「最近痛みはないけど歯ぐきの所に白い膨らみが出来るんだよね。」
「大きくなってきて潰したら楽になったけどこれって何?」
こんなお声を聞く事がよくあります。
歯茎にプチッと膨らんだ白いニキビのようなものが気づいたらできているという体験をお持ちではありませんか?
これは日々の臨床でも目にするもので、ご自身では痛みをそれほど感じないことも多いため、できているのに気づいていない方もいます。
歯茎をめくってみたら見つかるという方もいるかもしれません。この白い膨らみの正体は何だと思いますか?
目次
1.歯茎にできる白い膨らみの正体
これはフィステル(現:サイナストラクト)と呼ばれる膿の排出口です。日本語では瘻孔とも呼ばれています。
フィステル(サイナストラクト)は、膨らんだり潰れたり、ということを繰り返しますので、治ったと思っても通常はまた出てくることが多いのが特徴です。
原因が何か?どうして出来たか?を突き止める必要があります。
*口内炎と間違えている方もいらっしゃいます。
口内炎は、原因として
- ストレス
- 栄養不足(特にビタミンB郡)
- 体調不良
- 口腔内が不衛生
- 粘膜に傷がついた場合
- 物理的な刺激
などが原因で発生します。
口内炎であれば、強い痛みを伴う事が多いのでご自身で気づかれる事も多いかと思います。
また、ひどい場合でなければ自然に一週間程度で改善してしまう事が多いので、白いニキビのようなものに気づいた場合は鑑別しやすいかと思います。
2.なぜフィステル(サイナストラクト)ができる?
1)歯の神経が死んで感染を起こした場合
虫歯が進行して神経まで行ってしまったり、歯に強い外傷が加わったり、などの理由で神経が自然に死んでしまうと、中で細菌が繁殖し、歯の根の先に膿をためてそれが歯茎の方に排出口を作ることがあります。
2)神経を治療済みの歯が再度感染を起こした場合
根の治療を過去に行った歯の内部が感染すると、歯根の先端に膿をため、抜け道を作るように歯茎の方へフィステル(サイナストラクト)を作ることがあります。
3)歯根に穴があいた場合
根の治療を行った際や、治療時に歯根の壁に穴が開いてしまう際や内部吸収といって自然に歯の壁が解けてしまう場合、その部分に感染を起こし、膿を溜め、フィステル(サイナストラクト)から排出されることがあります。
4)歯根破折
神経のない歯は脆くなるため、噛んでいるうちに割れてしまうことがあります。歯根の部分で割れると、内部が感染して膿をため、フィステル(サイナストラクト)ができることがあります。
3.フィステル(サイナストラクト)の対処法
フィステル(サイナストラクト)ができてしまった場合、放っておいて治るものではありません。フィステル(サイナストラクト)は歯が原因となっているので、歯の治療を行わなければ解決しません。そのためには、気づいたら早期に歯科に確認を取るようにして原因が何かを突き止めましょう。
フィステル(サイナストラクト)ができた場合、これらの原因によって治療法が変わってきます。
1)歯根の先端の膿だまりが原因の場合
歯根の先端の膿だまりは、歯根の内部の感染が原因です。そのため、歯根内部の治療「根管治療」が必要になります。歯根の内部がきれいになり、膿だまりがなくなればフィステル(サイナストラクト)も無くなっていきます。
ただし、膿溜まりが非常に大きくなっている場合には根の治療だけでは治らない場合があります。
そのような場合には外科的な治療も併用する必要があります。
具体的には次のような治療が行われます。
<歯根端切除術>
歯茎を切開後、歯根の先端と膿の袋を切り取り、摘出します。
<歯牙再植術>
歯根から骨の表面までの距離が遠い場合には歯根端切除術ができません。そのような場合には、一度抜歯して膿の袋と歯根の先端を取り除き、また元の位置に戻すという治療法があります。
外科の方法はどんどん歯を保存する難易度が上がっていきますので出来れば外科処置を行う前に原因除去をしておきたいです。
<ヘミセクション>
複数の歯根がある場合、悪くなっている歯根のみを切断し、取り除きます。
ここまでいくと半分歯を抜いてブリッジ(橋掛けの被せ物)になってしまうので、清掃がとてもしにくくなりますし長期的にみた場合歯の持ち自体も悪くなります。
*歯根破折の場合
歯根がわれている場合には、通常は抜歯となります。
フィステル(サイナストラクト)ができていても痛みがなく、支障を感じないかもしれませんが、放置しておくと残せる歯も残せなくなりますし、周囲の骨がだんだんと破壊されてしまいます。
もし見つけたら早めに歯科を受診しましょう。
定期検診での早期発見・早期治療が結果的に、大切な皆様の歯を残す一番の近道です。