名東区の歯医者、西山歯科・院長、岩瀬です。
何となく「インプラント」って言葉を耳にはするけど、いまいち曖昧なイメージをしている方もいらっしゃるので差し歯との違いについてお話したいと思います。
インプラントと差し歯の両者の違いで、差し歯は歯茎に刺さっているイメージがあるからか、インプラントと混同されることがよくあります。ですが、両者は全く治療法です。
インプラントと差し歯はどこがどのように違うのか確認していきましょう。
1.インプラントと差し歯の違い
①インプラントは何らかの原因で歯を全て失ってしまった場合(歯を歯根まで丸ごと1本失ってしまった場合)に行います。
歯根もありませんので、チタン製の人工歯根を埋めて、その上に被せ物のパーツを連結します。
インプラントをするためには、外科手術を避けることができません。インプラントは埋めたすぐは骨とくっつきませんので、両者がくっつく期間を数ヶ月待つ必要があります。そのため、すぐに治療期間が長くかかってしまうデメリットがあります。
a.インプラントは保険がきくかどうか?
インプラント治療は、現在のところ保険適用がありませんので、自費診療となります。
②差し歯は、歯根が残っている場合(歯の頭部分である「歯冠」のみを失った場合)に行います。
表からは歯がないように見えますが、歯根は全て残っているため、その部分にコア(土台)と呼ばれるしん棒を立てて、上に被せ物をします。
歯根の状態に問題がなければ、すぐに土台を入れて、被せ物をすることが可能です。しかし、根の内部が汚染されている場合には、一度根の治療をし直したのちにコアを立てて被せ物をする流れになります。
b.差し歯は保険がきくかどうか?
差し歯は保険適用のもの、自費のものがあります。保険適用のものの場合、前歯のだと白くすることができますが、プラスチックの素材であるため、最初は良くても、年数が経つと黄ばんできてしまいます。
奥歯の場合には秘本的に銀歯の素材になります。条件によってはプラスチックの被せ物を選択出来る場合もあります。最初は良くても、年数が経つと黄ばんできてしまいます。
土台に使用する金属の影響で歯茎が黒くなってしまうことも珍しくありません。少ないケースですが、金属アレルギーを起こす場合もあります。
自費診療の場合はセラミックの被せ物になります。セラミックは透明感に優れ、年数が経っても変色しませんので、最も自然で美しい見た目を実現できます。また、セラミックは体に優しい材料で、金属アレルギーを起こしたり、歯茎を黒ずませたりすることもありません。
2.インプラントで注意したいこと
インプラントは顎の骨に埋め込みますので、周囲の細菌感染に注意しなければなりません。インプラント自体は虫歯になりませんが、歯周病菌に感染して「インプラント周囲炎」という感染症を起こすことがあります。インプラントがダメになってしまうほとんどの原因はインプラント周囲炎ですので、これを起こさないようにすることが大切です。
インプラントと周囲組織の結合は天然歯と比べて弱く、細菌感染を起こしやすい構造をしているため、天然歯の時よりもより一層ケアに注意を払う必要があります。
①インプラント周囲炎の予防法
インプラントの周囲に歯垢をためないよう、毎日の歯磨きをしっかりと行い、定期的に歯科へ通ってインプラントの状態のチェックと専門のクリーニングを受けることが大切です。また、かみ合わせの状態にも注意を払う必要があります。通常、定期的なメインテナンスを受ける際に噛み合わせもチェックを受けられます。
生活習慣の上でも注意事項があります。例えば糖尿病や喫煙はインプラント周囲炎の大きな危険因子ですので、そのような危険因子を避けるよう、健康的な生活を送るように心がけましょう。
3.差し歯で注意したいこと
差し歯は歯根にクサビのように差し込んである状態なので、かみ合わせの力が強くかかった時に負担が過剰になり、歯根が割れてしまうことが珍しくありません。
①歯根が割れるのを予防するためには
歯根が割れてしまうと、抜歯をせざるを得なくなります。どうしても歯が薄い場合には歯が割れるのを避けられない場合もありますが、歯根が割れにくいような土台を選ぶ、歯ぎしりのある人は歯ぎしりの力から歯を守る、などの対策をとることで歯を割れにくくすることが可能です。
具体的な対策として、保険で使用されている金属製の土台ではなく、自費のファイバーコアなど、しなやかな材料のものにすることで、歯根破折を極力防ぐことができます。また、歯ぎしりなどから歯を守るためには歯を保護してくれるマウスピースを眠っている間につける、という方法があります。
②歯が割れる、歯根破折(歯根にひび)原因
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- 歯根自体の強度低下:
神経をとって長期に経過している歯、残存している歯の厚みが薄い歯、感染している脆弱な歯などは主に歯根破折が起き易いです。
- 歯根自体の強度低下:
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- 過度な力:
歯ぎしり、くいしばり、硬い物を噛む習慣がある、ブリッジや入れ歯の支えとなっている歯、転倒などでの外傷なども歯冠・歯根破折が起き易いです。
- 過度な力:
- 不良な修復物や根管治療:
応力を集中させるような、適合不良なポストコア(土台)、適合不良な詰め物、過度な応力がうける根管治療も歯根破折のリスクが高くなります。
③歯が割れる、歯根破折(歯根のひび)が起きる事での症状
神経がある歯が割れると、初期症状として歯がしみたり、噛むとズキッと痛かったり、症状がすすむと何もしなくてもズキズキ痛んだり、虫歯などの神経炎症に近い状態の痛みを感じます。
神経がない歯であれば、破折部から細菌が入り込み、歯肉が腫れたり、歯肉から膿がでたりします、噛むと違和感がでたり浮いた感じがします。
歯が割れる事はある日突然起きます。歯が割れたり、歯根の破折に対して現在は確立した治療法はなく、歯科医院で診てもらうと抜歯という宣告を突然受け、患者さん側は「急に抜歯だなんて、本当に抜歯しかないのか?」と戸惑う事がよくあるかと思います。
歯を失う原因の割合は歯周病が42%、むし歯32%、その他13%、歯根破折11%、矯正1%という報告があります。つまり、歯周病、虫歯、のリスクがない方、歯は健康でなんでも噛める方にとっては歯根破折が一番のリスクとなります。また、メンテナンスクリーニングが確立しつつある現代において、歯の破折や歯根破折が抜歯原因のトップになると考えられています。
④歯根破折(歯根にひび)に対する治療
歯が割れる、歯根破折に対する治療は現在の歯科医療において確立された方法はなく、「抜歯するしかないという考え」が一般的です。
歯が割れる場所によって割れていても保存出来ることはあります。この場合は、歯根破折が奥歯の場合で根っこが2本あるときに、割れてしまった根の方を抜歯してもう一つの根を生かす場合です。
もう一つは歯根部で割れるのではなく、もう少し上の部分(歯冠部)で割れた場合です。
抜歯までは至らないですが、神経の治療を行ったり、180度歯を回転させて被せ物がしっかりと維持出来る状態が確立出来れば歯を残せる場合もあります。
いずれの場合でも一度しっかりと診査・診断を行って残すメリット・デメリット、抜歯するメリット・デメリットを考察していきましょう。