名東区の歯医者、西山歯科・院長、岩瀬です。
皆さんは無意識に歯と歯が接触していませんか?
この状態は実はあまりよくないんです。
みなさんは 「TCH」 という言葉をご存じですか?
TCHとは 「Tooth Contacting Habit」 の頭文字をとったもので、意味は “上下の歯を無意識にくっつけている癖” のことをいいます。通常、上下の歯は数ミリほど空いているのが正常な状態です。TCHにより、常に上下の歯が接した状態が続くと、歯に圧力がかかり、歯を支える歯槽骨にも過度な負荷がかかるため、歯や歯周組織だけでなく全身にも大きな影響を及ぼすことになります。
また、歯ぎしり、噛みしめは歯や歯槽骨に伝わる力がTCH以上に強いため、歯や歯周組織への影響はさらに大きなものとなりますが、就寝中に無意識にしていることが多く、自分で気づくことは難しいといえます。
このような強い力でなくても、歯を軽く合わせる癖によって歯や体への影響があることがわかってきました。
目次
1.歯を合わせる癖TCH
夜間に無意識に行う歯ぎしりや、ふとした時に行う食いしばる癖が歯に良くないことは一般的にもよく知られています。そしてこのような癖は、歯にダメージを与えるだけでなく、あごの関節や、体の筋肉にまで影響が出ることがわかっています。
そのため、歯ぎしりや食いしばりに対しては、歯にマウスピースをつけたりすることで対処されていることも多いのですが、そこまで強く力がかからない場合には、これまで特に注意が払われていませんでした。
皆さんは、ふとした瞬間や何かに集中している時に歯を合わせていることはありませんか?もし心当たりがある場合、それが強い力でないとしても歯や体にとって悪影響が出ることがあります。
2.TCHの悪影響
TCHが起こりやすいのは、例えば、本を読んでいる時、ゲームをしている時、スマートフォンを見ている時、料理や家事をしている時など、何かに集中している時です。
あまりよく知られていませんが、本来歯を合わせるべきなのは食事や会話の時のみであり、その時間は1日に20分以内程度と言われています。
もしそれ以上不必要に上下の歯を合わせている場合、それは歯への過剰な負担、周囲筋肉や関節への過剰な負担となり、様々な影響が現れてきます。
放置すると歯を失う原因にもなります。
TCH、歯ぎしり、噛みしめは、放置しておくと歯に亀裂が入り、割れたりすることがあります。また、歯肉や歯周組織に炎症が起こって歯周病を進行させたり、知覚過敏の悪化にも繋がります。さらに、顎関節や筋肉に余計な力が加わることから、顎関節症をはじめ、頭痛や肩こり、耳鳴り、めまいといった全身症状をきたす場合もあります。
TCHの段階では歯が接している程度なので、歯を失うリスクは小さいのですが、癖になってしまうと次第に歯ぎしりや噛みしめへとエスカレートする恐れもありますので、意識して改善することがとても大切です。
3.TCHによって起こってくる具体的な症状
TCHによって起こってくる症状にはいろいろなものがあります。
例えば、歯に関しては、歯の違和感や知覚過敏、歯の痛みすら感じてしまうことがあると言われています。
全身の症状としては、あごの関節の痛み、お口が開きづらいというような顎関節症状に加え、頭痛、肩こり、首の痛みといった頭部周辺の症状が主に知られています。
また、歯が接触する時というのは、唾液も一緒に出てくるので、唾液を飲み込む回数が増えます。それゆえ、唾を飲み込む回数が増えてしまうことから、オナラやゲップが増えるということまで起こってきます。
そしてさらに、TCHを行なっていることで夜間の歯ぎしりを誘発、悪化しやすくなるとも言われており、さらに症状が悪化することが危ぶまれます。
①初期症状をチェック!早めの対策をしていきましょう。
TCH、歯ぎしり、噛みしめの治療を遅らせてしまう原因は、自分で気づきにくい点にあります。
まずは初期にあらわれやすい、
a.知覚過敏
b.詰め物がとれやすい
c.起床時に顎や顎の周りがこわばっている
このような症状を感じたらTCHや歯ぎしり、噛みしめを疑いましょう。意識して上下の歯を離すことに、ストレスや違和感があるかがチェックの指標となります。
4.TCHへの対策
もし無意識に歯を合わせていることがある場合、なるべく早めにその癖をやめることが大切です。意識して歯を合わさないようにすることで、自然と起こらなくなってくることも多いですが、忙しい毎日の中だとどうしても忘れてしまいがちです。
そんな場合、次のような方法を試してみてください。
①とにかく「歯を離す」ことを普段から意識してみましょう。
②忘れないように「歯を合わせない」と書いたメモや付箋紙を家のいたるところに貼ってみましょう。
たったこれだけのことでも、通常はだんだんとTCHなくなっていきます。
一度癖になってしまったものはなかなかやめられないものですが、だいたい2〜3ヶ月もするうちにきっと改善が見られることでしょう。
TCHはストレスが大きな原因として考えられています。そのため、普段からストレスを溜め込まないよう、ストレスを発散できるよう、自分の好きなことをする時間を持つことも大切です。
5.具体的な治療法
TCHの有無をチェックし、既に初期症状があらわれはじめている方は、専門機関を受診してください。TCHが疑われる場合には、歯を離すことを意識することからはじめてみましょう。日常生活で視界に入りやすいパソコン画面やテレビのリモコン、洗面台、トイレ、食卓などに「上下の歯を離してリラックス」などと書いたメモ紙を貼るなどして、意識しやすい環境をつくりましょう。
身についてしまった癖は簡単には抜けません。メモを見て意識することを3~4カ月続けると、メモを見なくても自然と上下の歯は接しなくなります。 既に歯ぎしりや噛みしめにより強い症状があらわれQOLに支障をきたしている場合は、マウスピースをはめてダメージを防ぐことを優先しましょう。
ストレス解消が予防になります。
TCH、歯ぎしり、噛みしめは癖のようなものですが、ではなぜ癖になってしまうのでしょうか?その要因の一つが噛みあわせによる問題、加えて「ストレス」も考えられます。噛みあわせの悪さが影響している場合、適切な治療を行うことにより改善できます。 一方、ストレスが原因の場合、できる限りストレスを解消する方法を見出し、日頃から歯の健康を意識して過ごしましょう。