名東区の歯医者、西山歯科・院長、岩瀬です。
様々な理由で歯を失った方がいらっしゃると思いますが、入れ歯にしたけど合わない、以前あった歯のように極力ストレスなく食事を楽しみたいと思っている方は大勢いらっしゃいます。
ご自身の歯の感覚に近いインプラント治療をしたいけど自分って出来るのかな?と不安に思っている方からのご相談をよく受けます。
骨の量が足りないとインプラントはできないの?
みなさんの中には、「骨の量や厚さが足りない」という理由から、インプラント治療を断念した人もいらっしゃるのではないでしょうか。以前は骨の量や厚さに左右されていたインプラント治療ではありましたが、歯槽骨の量や厚さを補うさまざまな治療法が確立し、以前はインプラント治療に適応外となってしまった人でも、インプラント治療を受けることが可能となりました。そこで今回は、歯槽骨の量や厚さが足りない場合に適応されるインプラント治療について、詳しくご紹介していきましょう。
目次
1.インプラントの基礎知識
まずは、インプラントとはどのような治療をおこなうのかをご紹介致しましょう。インプラントは虫歯や、歯周病、外傷などで失った歯の機能を補うために、およそ100年前からおこなわれてきた治療法です。コバルト合金と呼ばれる注射針や骨の補正に使用されている金属のネジを歯槽骨に埋めていましたが、骨に結合することはなかったので、結局は既存の歯に固定してインプラントを維持するしかありませんでした。しかし、1965年にチタンが骨と結合するという発見をもとにチタン製のインプラントが開発され、現在に至るまでチタン製のインプラントが世界中で使用されています。
①インプラントとは?どのような治療法?
インプラントとは、厳密には人の身体に埋め込む人工物のことを言います。歯科診療に用いられるインプラントは、「デンタルインプラント」と言いますが、近年は歯科におけるインプラント治療が一般的になっており、単にインプラントと呼ぶことが多くなっています。
インプラント治療とは、歯を失った箇所に人工の歯根(インプラント)を埋入し、歯を補う治療法です。従来は、歯を失った治療法としてブリッジや入れ歯が一般的でしたが、近年はインプラント治療を希望される患者様が増えています。
歯は、目で見える部分の歯と、それを支える歯根から成り立っています。歯を失うということは、それを支えている歯根も失ってしまうということです。「インプラントと差し歯は何が違うの?」という方も少なくありませんが、差し歯は歯根が残っている状態で行う治療であり、インプラントは抜歯が必要になった時(歯根がない)に行う治療法です。
2.なんで骨が足りなくなるのでしょう
では、なぜ骨は足りなくなるのでしょうか。歯を失ってから長い時間が経っている場合、骨がやせ細ってしまう研究結果も報告され、歯を失ってから約10年で1㎝もの歯槽骨が減少していることがわかっています。この場合、長年入れ歯をしている場合も当てはまり、長年の入れ歯生活から脱却しようとインプラント治療をおこなおうと検査をしたところ、骨の量や厚みが足りない自体に陥ることも多く見受けられます。
また、歯周病で歯を失った場合は、歯周病菌によって骨が吸収され減少しているため、インプラントに適応しない場合があります。
3.骨の量や厚みが足りないとインプラント治療はできないのか
従来のインプラント治療では、歯槽骨の量や厚みが足りない場合は治療をおこなえませんでした。一般的なインプラントの直径3~5mm、長さ6~18mmとあり、歯槽骨の量や厚さはもちろんのこと、歯槽骨の幅や高さが足りない場合、埋め込むことができませんでした。
しかし、骨造成(GBR)や上顎洞底挙上術が確立され、それら治療をおこなうことでインプラント治療をおこなうことができるようになり、更にはショートインプラントが開発され、今までインプラント治療がおこなえなかった人でも、失った歯を補う治療法の選択支の1つとして考えられるようになりました。
4.骨の量が足りない場合の処置
以下が、骨の量が足りない、厚みが足りない、幅や高さが足りない場合におこなう治療法です。
①ショートインプラント
通常のインプラントのサイズはおよそ、直径3~5mm、長さ10~18mmでありますが、ショートインプラントは、8mm未満のインプラントを使用します。「骨の厚みや高さが足りない」、「埋入予定の部位は神経や血管が近い」などの患者さまに適応されます。
ショートインプラントを入れることで、次のようなことが可能になります。
a.大事な血管、神経、組織を避けることができる
歯槽骨が少ない場合、インプラント治療が難しくなる原因として、重要な血管や神経、組織の存在があります。例えば、上顎の場合は鼻の横に位置している上顎洞、下顎の場合は太い血管や神経が入っている下歯槽管が挙げられます。骨が少ないと、通常の長さのインプラントではこれらを傷つけてしまう恐れがありますが、ショートインプラントを使うことでそのようなリスクを避けることが可能です。
b.余計な手術を減らすことができる
骨造成の手術を行わないことで、費用の節約や期間の短縮、精神的・身体的な負担を減らすことができます。
c.インプラント治療の可能性が広がる
これまで骨が少なくてインプラントができないと言われていて、骨造成がネックとなりインプラントを控えていた方にとって、インプラント治療を受け入れやすくなる可能性が広がってきます。
②骨造成(GBR)
骨が足りない部位に、人工骨や自家骨(自身の骨)を配置し、更にその上にメンブレンと呼ばれる人口膜を配置することで歯槽骨の造成するスペースを確保します。患者さまの歯槽骨の状態によって、インプラント埋入と同時に骨造成する場合と、骨造成のみをおこない、期間をおいてインプラント埋入をおこなう2通りの方法があります。
③上顎洞底挙上術
上顎洞底挙上術には2通りの方法があります。サイナスリフトは患者さまにかかる負担も多く、近年ではソケットリフトを採用することが多く、世界的にも採用されている方法です。
a.サイナスリフト
上顎洞底までの骨の量が少ない場合、骨を大きく造る必要性があります。その場合、歯槽頂の横から窓開けをし、その窓開けから、上顎洞粘膜(シュナイダー膜)を持ち上げて、その下に直接インプラントを埋め込みます。
サイナスリフトはソケットリフトに比べて安全な術式です。なぜならば、ソケットリフトは盲目的で見えない環境で行わなければならなくなるので、事故が起こりやすくなります。サイナスリフトは、その分、直接、目で確認をして確実に持ち上げていくので、確実に骨を作るアプローチです。
特に骨が少ないケースではこの処置が有効になります。
b.ソケットリフト
骨が薄くなっている場合に適応される方法です。インプラントを埋入するために、上顎の骨に小さな穴を開け、人工骨補填材を入れ専用機器で上顎洞底を持ち上げます。4~5ヶ月で骨として形成されます。
5.まずはCTスキャンで術前検査を
今回は「骨の量が足りない場合、インプラント治療はできないのか」というご質問について、ご紹介してまいりました。「骨の量が足りない」ことを理由に、インプラント治療を断念した人、長年の入れ歯生活で骨の量に不安を覚える人でも、今回ご紹介したショートインプラント、骨造成(GBR)、上顎洞底挙上術などの治療をおこなうことで、インプラントを埋入することが難しかった歯でも、インプラントを埋入することが可能となりました。
インプラントは顎の骨に埋め込むため、神経や血管を傷つけるリスクと向き合わなくてはなりません。どんなに経験を積んだ歯科医であっても、検査なしで行えば、神経や血管に思わぬ損傷を与えてしまうでしょう。
そのため、すべての患者様に術前検査を受けていただきます。患者様それぞれで神経や血管の場所、骨の厚さはミリ単位で異なっているためです。
一刻も早いインプラント手術をご希望の患者様もいらっしゃいますが、納得できる安全性の高い治療のために、術前検査へのご協力をお願いします。
術前検査で活躍するのは、歯科用CTスキャンです。細部まで綺麗に撮影可能なものを導入しております。
また、他にも噛み合わせのチェックなど、インプラントをより長く快適にお使いいただくための診察も行います。
「他院で骨の量が理由で治療を断られた」、「インプラントが適応するか不安」など、インプラント治療をお考えの際には、お気軽にご相談ください。